企業の存在価値を再構築するプロセス。パーパスにフォーカスした経営戦略(3)

4回シリーズで掲載しています「パーパスにフォーカスした経営戦略」の今回は第3回になります。
このシリーズ記事ではこれまで、いま企業の存在意義やパーパスに注目が集まる背景、企業の存在意義やパーパスとはそもそも何かについて、お伝えしてきました。

そして今回は、企業の存在意義を再構築するプロセスを紹介してまいります。

第1回 今、なぜ「企業の存在意義」なのか?
第2回 企業の「存在意義」「パーパス」とは
第4回 企業と商品のあるべき姿を共有する方法

企業の存在意義を再構築する4つのステップ

企業の存在意義やパーパスを再構築するに当たって、4つのステップで進めることをお勧めします。
既にパーパス経営をある程度進めている企業では、途中のステップから推進されるのも有効な取組みになると思います。

ここでは、基本的なプロセスとして紹介します。参考にしてみてください。

 

1.バリューの明確化

企業の存在意義やパーパスを再構築する上で、まず明らかにすることとして、「企業のバリュー」が挙げられます。

バリューとは、自社が顧客や市場、さらには社会に発揮できる「力」。または提供する「価値」です。
その企業が存在することで、どういった価値を社会にもたらすことができるかといったものになります。
その会社でなければならない必然性です。

言い換えれば、企業の「独自価値」や「独自性」といったことになります。

企業の存在意義・パーパスを再定義するに当たって、バリューを明らかにすることから始めることで、その企業らしい存在意義を見いだすことができます。

では、バリューはどのように明らかにするのでしょう。

企業のバリュー・独自価値を構成するものとして7つの要素が挙げられます。
1.機能価値
2.背景要素
3.パーソナリティ
4.シンボル
5.顧客像・価値観
6.情緒価値
7.関係性

各要素について、詳しくはこちらの記事を参考にしていただければ幸いです。
➡事業コンセプトとは。どう決める?作り方などを解説。
事業コンセプトとは。どう決める?作り方などを解説。

これらの7項目を検討していった際に、項目によっては他社と大きな違いを見いだせないものも出てきます。
それでも、全ての項目を整理していくと、自社が大事にしてきたもの、他社には出せない価値が見えてきます。
まずは、この7項目の整理から独自価値・バリューを明らかにすることに挑戦してみてください。

2.ビジョンの設定

次のステップでは、バリューを背景に実現させたい「未来」や「将来像」を設定します。
1で明らかになったバリューが現在の価値だとすると、この価値は将来どのような価値を顧客や社会に提供できるのかを設定するプロセスになります。

こんな社会の実現が可能かも、こんな将来をつくれたら仕事し甲斐がある、といった気持ちで、いろいろな未来を検討してみましょう。

プロジェクトメンバーでディスカッションすれば、たくさんのアイディアが出てくると思います。

そうした様々なアイディアから、納得性の高いビジョンを描いていくことになります。
その際、以下のような視点で検討することが望まれます。
・自社らしいかどうか
・顧客や社会との関係性が強くなるかどうか
・社会価値があるかどうか

そもそも自社らしさを損なうようなビジョンでは意味がありません。
また、このビジョンで既存顧客との関係性が弱くなってしまっては、ブランディングの意味がありません。
さらに、存在意義の再構築という目的からすると、このビジョンは社会的価値を見いだせるものである必要があります。

ここで描いたビジョンは出来れば、ビジョンステートメントにして、従業員全員で共有できる内容にすることが望まれます。

このビジョンステートメントは社員全員が目指す旗印になります。
モチベーションの向上を促せる内容を目指しましょう。

3.パーパスの確認

いよいよ、企業の存在意義・パーパスを明らかにするプロセスです。
ここまで整理した企業のバリュー、そして実現させたいビジョンをもう一度眺めてみましょう。

そこから、自社が社会で存在している「わけ」が見えてくると思います。

おそらく、その時の納得感というのは相応のものがあると思います。

「あぁ、このために自分たちの会社はあったのか。」
「会社が存在してきた理由はこれだったのか。」

ワークショップを通じて、これらのプロセスを支援していますが、よくこのような声を耳にします。

4.ミッションの整理

そして、ビジョン・パーパスの実現に向けたミッション(役割・任務)を整理しておきましょう。
ビジョンもパーパスも、これらは机上での議論から明らかにしていきます。
それを具体化していく。事業活動に落とし込んでいく際には、ミッションの整理が不可欠です。

ミッションは、階層ごとに整理しておくことで、責任が明らかになり主体性が高まります。
例えばこのような階層でミッションを整理してみてはいかがでしょう。
・会社としてのミッション
・部門ごとのミッション
・個人としてのミッション

「従来のブランディングとパーパス経営の違い」と「実態づくりの重要性」

ここで、従来のブランディングとパーパス経営の違いについて紹介したいと思います。

従来のブランディングは、目的が「他社との差別化」になりがちでした。
それは、ブランディングを活用して、市場シェアを拡大していこうといった狙いがあるからです。
そのため、ブランディングで強調されることは「他社と異なる価値」ということになります。
もちろん、比較広告を行うということではありません。

あくまでも商品広告や企業コミュニケーションを通じて、それとなく自社の強みや独自価値を伝えるといった手法をとります。
ブランディングを進める際のこちらの意識としては、「買っていただく意識」が強くなりがちです。その意識は、思いのほか顧客や社会に伝わります。
成功すれば購買行動を促しますが、失敗するとかえってブランド力を下げる結果になります。

一方のパーパス経営では、目的は「共感形成」になります。
つまり、その会社の存在意義に対して共感を得られるかどうかということになります。
そのため、強調されるべきは「実現させたい未来」となります。
自社の存在によって、どんな社会を実現させたいのか、どんな未来を描いているのかが勝負になります。
推進するこちら側の意識も、他者との違いや買っていただく意識というよりは、「賛同を集める意識」が求められます。

 

そして、なによりも大事なことは「実態づくり」です。

前述の存在意義を再構築するプロセスにおいて「ミッションの整理」があります。
これは、実態づくりを推し進めるために必要なプロセスと位置付けています。
つまり、企業の存在意義や、描く未来や将来像を伝えたところで、その実態づくりを進めなければ、かえって信頼を失う結果を招いてしまします。

そのため、パーパス経営では、実態づくりがとても重要な取組みになります。

パーパスにフォーカスした経営戦略

今回は、企業の存在意義を再構築するプロセスを紹介させていただきました。
この記事が、皆さまの会社の存在意義を高める一助になれば幸いです。
この記事は全4回のシリーズです。
パーパス経営について、こちらも参考にしてみてください。

第1回 今、なぜ「企業の存在意義」なのか?
第2回 企業の「存在意義」「パーパス」とは
第4回 企業と商品のあるべき姿を共有する方法

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