事業コンセプトとは。どう決める?作り方などを解説。

事業強化を進める際に、不可欠なプロセスとして「事業コンセプト」の再構築があります。
この事業コンセプト。闇雲に設定しようとしても戸惑ってしまいます。

そもそも、「コンセプト」とはどのようなものでしょう。
事業コンセプトはどのように決めていけばよいのか。今回は事業コンセプトの決め方について具体的に解説していきます。

事業コンセプトとは

コンセプトという言葉は、よく耳にします。

「今回の商品のコンセプトは?」
「この事業のコンセプトは?」

といったように、商品や事業のコアになる価値をコンセプトと言います。

事業コンセプトも同様です。
「その事業のコアになる価値を、社内外と共有するために言語化したもの」が事業コンセプトです。

事業コンセプトが活用される場面は様々です。
社内ではその事業に関係する社員や複数の部門が、自社の事業の目指す方向性を共通認識化するために活用します。
また、社外に対しては協力会社への共有や、顧客の購入を喚起するためにも必要になります。

事業コンセプトが事業のもつ独自性を端的に伝えるものになっていないと、コンセプトの解釈が人によって変わってしまい、事業強化に向けた取り組みがバラバラなものになってしまいます。

例えば、商品自体(中身)の価値と、パッケージ、広告、販促物などがバラバラの印象を受ける商品は、コンセプトが曖昧だったり、独自価値を十分に深掘り出来ていなかったりすることが要因として考えらえます。

事業コンセプトを設定する際は、事業に関わる複数のセクションの人たちや外部の協力会社の人にも伝わるよう、エッセンスを整理する必要があります。

では、事業コンセプトとは、どのようなものでしょう?
整理するべきエッセンスにはどのようなことがあるのでしょう?

一言でいうと、事業コンセプトとは
「誰にどんな喜びを提供する事業なのか」を表現したものです。

コンセプトは、事業の独自性や事業らしさをどれだけ表現できているかが重要です。
そのため、一言二言の短いフレーズである必要はありません。
多少言葉が多くても、伝わるコンセプトである必要があります。
できれば、それを見た社員のモチベーションが上がるようなコンセプトになっていることが理想的です。

そうしたコンセプトを設定する方法は後ほど述べます。

事業コンセプトの例

ここでは、事業コンセプトをイメージしやすくしていただくために、いくつかの例を挙げていこうと思います。

スターバックス

「人々の心を豊かで活力あるものにするために」

スターバックスは、ファッショナブルで居心地のいい空間で、バリスタが高品質な豆から抽出したコーヒーを提供することが特徴のコーヒーショップです。
「第三の場所の提供」という考え方のもとに、職場でも家でもない3つ目の居場所の提供がスターバックスの空間提供のポリシーになっています。
ショップのスタッフをパートナーと位置付け、来店客の「心を豊かで活力あるものにするために」接客や店内の雰囲気がどうあるべきかを磨いてるいるのがスターバックスです。
ブランドコンセプトがスタッフの行動や空間づくりまでミッションとして浸透している点で、スターバックスは高いブランド力を保っていると考えられます。

東京ディズニーリゾート

「世代を超え、国境を超え、あらゆる人々が共通の体験を通して、ともに笑い、驚き、発見し、そして楽しむことのできる世界」

東京ディズニーリゾートに一度でも訪れたことがあれば、上記のコンセプトは理解いただけると思います。
私たちはディズニーリゾートを訪れる際、コンセプトを理解したうえで訪れることはないと思います。
一度行ってみてアトラクションやスタッフの対応などから感じたポジティブな感情が、再び訪れようとする動機になっています。
その背景には、東京ディズニーリゾートはコンセプトの実現とブランド価値の維持のために、様々な工夫を重ねていることが伺えます。

事業コンセプト作りの目的

では、事業コンセプトを実際に作る際、どのようなことから決めていけばよいのは、その要素(エッセンス)について説明していきます。
先ほど、事業コンセプトとは「誰にどんな喜びを提供するブランドなのかを表現したもの」と申し上げました。

「誰に」というのは、「その事業の存在によって喜んでほしい相手」、言い換えれば「事業や商品のファン」としてどういう人が相応しいかを決めることになります。

そして、その人が商品やサービスを体験することで、「どんな喜びを得られるか」を決めることがコンセプト設定です。

事業によってどんな喜びを感じるかはお客様次第と考える企業もあります。
しかし、じぎょ強化は「ファンの喜びを最大化するために、自社に何ができるか」を突き詰めていくプロセスです。

そのため、「誰にどんな喜びを提供する事業なのか」というコンセプトを明確にしなければ、事業が目指す方向性が曖昧になり、社内がバラバラに動き出してしまいます。

それでは、折角の事業強化が無駄な取組みになってしまい、結果として誰からも愛されない事業になってしまいます。

私はよく事業コンセプトを設定する意義について、複数の部門や関係者が一緒に登っていくゴールの設定だと言います。
社内の事業に関わる人たちを同じ方向に向かせ、エネルギーを集中させるために、必要不可欠なプロセスが事業コンセプトの設定と言えます。
当社では、そうした観点から、事業コンセプトを事業ビジョンと表現しています。

事業コンセプトの7要素(エッセンス)

それでは、コンセプトを作る上で整理する必要があるエッセンスについて説明していきます。

事業の独自性や独自価値、事業らしさを明確にしていくために、7つの要素を明らかにしていく必要があります。

その7つの要素(エッセンス)について解説していきます。

1.背景要素

独自性を支える背景や要因です。これは自社の技術や社内の人材、社の歴史など、その事業の強みの背景にある要素になります。

2.パーソナリティ

事業を「人」と仮定した場合の性格です。その事業は、人に優しい性格なのか、強い性格なのか、協調性を重んじるのか、といった性格を決めます。

3.シンボル

シンボルは、事業の価値を社内や社外(顧客や社会)と共通認識化させている象徴です。例えば、ロゴやネーム、場合によっては人といったことも考えられます。そのシンボルをみれば、事業価値を共有できる装置のようなものです。

4.機能価値

事業が商品を通じて顧客に提供している具体的な価値です。機能価値は、顧客が代金として支払う対象とも言えます。美味しいコーヒーや心地よい時間、非日常的な景観などです。

5.顧客像

事業活動によって喜んでもらいたい人です。1~4を踏まえて、こういった価値をもった事業であれば、こういう価値観を大事にする人に喜んでいただきたい、といった発想で決めていきます。性年齢といったことではなく、どういう価値観を大事にしている人に喜んでほしいかを想定していきます。

6.情緒価値

顧客が事業に関する商品やサービスを体験したときに得られる喜びです。体験することで顧客が感じるポジティブな感情を設定ます。人に自慢したい、心まで潤う、映える、といったものです。

7.関係性

事業が顧客と築くべき関係性です。事業強化において、顧客を単に商品を買ってくれる消費者と考えるよりは、長いお付き合いをする相手と考えるのが相応しいでしょう。そのお付き合いをどのようなお付き合いにするかを決めるのが、関係性の設定です。関係性も仲間なのか、結婚相手なのか、相棒なのかによってニュアンスが変わってきます。

これら7つの要素をブランドの独自性を構成するエッセンスとして明らかにします。

一度決めた事業コンセプトでも、もしかしたら他社の事業と似たものになっていることに気付くことがあるかと思います。
これまでの経験で申し上げると、この7要素を明らかにすれば、他社と似たようなブランドになることはないはずです。

事業コンセプトの決め方

では実際に事業コンセプトはどのように決めていけばいいのでしょう。
コンセプトは、それを決めた後に関係する部門の担当者で共有し、実際の業務に落とし込んでいく必要があります。
そのプロセスで、誤解が生じたりしないようにする工夫が必要です。

そのため、事業コンセプトの決め方は、事業に関わる人たちでディスカッションして決めていくことを勧めます。

複数の人でのディスカッションは、意見をぶつけ合うことになるので、議論がまとまらなかったり、纏まるまでに要する時間が多くなったりします。
それでも、その後のことを考えると、関係者で深く議論した方が結果的に効率的な事業強化が可能になります。

事業コンセプトの事例

ここでは、医療機関の従業員が各部門から集まって、20人ほどで決めていった事業コンセプトを紹介します。
病院としての強みを明らかに、医療機関として今後どのような価値を地域に提供していくのかを決めたものになります。

美濃市立美濃病院の事業コンセプト

「美濃市立美濃病院の使命は、様々な部門とスタッフが職種の垣根を超えてシームレスに連携し、健診から治療・入院前から退院後までを一貫して支援することです。
健康管理センター・在宅医療支援センター・訪問看護・訪問リハビリテーションなどのサービスを充実させると共に、持ち前のコミュニケーション力でその使命を果たしてまいります。
美濃病院のスタッフは、患者様との相互の信頼関係のなかで医療サービスの提供にあたります。
私たちの明るい笑顔と優しく丁寧な声掛けが、患者様とご家族にとっての安心のシンボルでありたいと考えます。
親身に寄り添う安心があります。 美濃病院」

少し長いと感じるかも知れません。
しかしながら、自院の強みや独価価値、機能価値、情緒価値を明らかにし、病院が目指す方向性が伝わる内容になっているかと思います。

ぜひ、参考にしていただければと思います。

事業コンセプトの設定と自分ゴト化

今回は事業コンセプトについて、その意味と作り方について、お伝えしました。
事業の独自性をコンセプトに落とし込み、社内外で共通認識化する取組みから事業強化は始まります。
社内意識の変革から社外認識の向上までを一貫したコンセプトのもとに効果を最大化する事業強化を、当社では支援しています。
事業コンセプトを再構築し、それをベースとしたインナーコミュニケーション、商品力強化、体験価値の向上、情報発信力の強化などから事業強化を実現させます。

一度お気軽にご相談ください。
事例の詳しい内容などご紹介させていただくとともに、企業の課題に即した効果的な取組みをご提案いたします。

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