事業価値の再構築で抑えるべきポイントとは

事業価値の再構築とは

事業や商品の独自価値や存在意義を明らかに、その価値を商品やサービスのみならず、情報発信や顧客獲得など事業に関する様々な側面で一貫性を保たせながら事業力を強化するプロセスを事業強化の再構築と言います。

事業価値の構築によって生み出される価値が「事業ブランド」になります。
その価値も、時代の変化、生活者の価値観の変化、事業環境の変化によって成長させていく必要があります。

「事業価値の再構築」は一度築いた事業価値を、そうした変化に応じて再構築し、事業を強化するプロセスをいいます。
これまで構築してきた事業資産を活かしながら、新しい時代や新しい顧客にも受け容れられる事業へと再構築します。
事業価値の再構築は、建築に似ているところがあります。
一度建てたビルを再構築して、新たなビルを市場の変化に合わせて再生する感覚です。
その際、基礎工事までやり直す必要があるのか、それとも外装工事や内装工事で済むのかなど、見極めながら進める必要があります。

事業価値の再構築の進め方

1st.Step 事業の価値を正しく把握する
事業価値の再構築を進める上で最初のプロセスは、事業価値の現状認識です。
今の事業は、どのようなことが強みになっているか。その強みを支えている背景は何か。その強みはどういう顧客に、どのように評価されているのか。ファン心理を形成しているのはどのようなことがポイントかなどを正しく認識する必要があります。
社内のメンバーでディスカッションするなど、複数の視点で現状を把握することでより精度の高い現状把握ができます。

また、ユーザーへの定性調査も有効です。
こちらら側の思い込みを排除し、できるだけ客観的に把握する上では、グループインタビューやデプスインタビューをお勧めします。
Web調査などで定量的に調査する場合もありますが、選択肢の設定はリサーチャーの先入観が働き、客観性が保てていない場合があります。
ユーザーへのデプスインタビューなどで、なぜその商品を選んだのか、どういう満足感が得られたのか、といったことを深く聞くことで、意外な気付きがあります。

いずれにしても、事業価値の再構築の最初のステップは、事業価値の現状をできるだけ正しく認識することです。
それはイメージといった情緒的な側面だけでなく、機能的な側面も含めブランドを分析することになります。
この現状把握が甘かったり、曖昧だったりすると、再構築の成功は望めません。非常に重要なプロセスになります。

2nd.Step 顧客と市場の変化をよむ
事業価値の再構築のプロセスでは、事業価値の現状を把握した上で次に行うのが「顧客や市場の変化」をよむということになります。
新規事業の開発においても事業価値の再構築においても、顧客や市場が今後求める価値を把握することは不可欠です。

ここでいう「顧客と市場の変化」というのは、マーケット規模の変化といった量的なことだけでなく、顧客や市場が求める価値がどのように変化していくか、といった価値観の変化をよむことになります。

例えばアルコール市場では、マーケットの中心にいるユーザーの年齢の高まりで、糖質ゼロ、プリン体ゼロなどの健康志向という価値観に寄り添った商品が増えてきました。
このように市場の変化を価値観の変化として考えていく発想が必要です。

3rd.Step 事業ビジョンを描く
事業価値の現状把握、市場や顧客の価値観の変化を踏まえて、事業が次に目指すべき姿をビジョンとして描きます。
将来(例えば10年後とか20年後に)どのような事業に成長するべきかを、描いていきます。

ビジョンとして設定していく内容としては、現状把握と同様の内容になります。
将来この事業は、どのようなことが強みになっていくべきか。その強みを支えていく背景にどのようなことがあるか。その強みはどういう顧客に、どのように評価されてファン心理を形成していくべきかを設定していきます。

4th.Step 事業価値の再構築・成功に向けた課題の発見とミッションの設定
事業ビジョンを実現するために、どのようなことが課題になるかを認識しておく必要があります。
その中には、事業自体や商品、商品パッケージなどの商品周辺の変更、販売方法や顧客獲得法、情報発信、営業方法など様々な視点から課題を発見しておくことが望まれます。

また、社員の意識変革といったことも課題になってくるケースはよくあります。
そうしたことを踏まえて、ビジョンの実現に向けて取り組むべきことを従業員の「ミッション」として設定します。
ビジョン、ミッションといっても、それを従業員が自分ゴト化し、具体的な変化が社内に生まれなければ、絵に描いた餅に帰してしまいます。
必要に応じて、社内施策(インナーコミュニケーション)の取組みが有効になってきます。

ここまで、事業価値の再構築を成功させるための一般的なプロセスをご紹介しました。

事業価値の再構築を成功させるポイント

事業価値の再構築は成功するケースと失敗するケースが明らかです。
事業価値の再構築を成功させるために大事になってくる視点があります。
それは、「変えるべきこと」と「守るべきこと」を見極める視点です。
事業価値の現状を機能価値、情緒価値など様々な側面から分析した内容を俯瞰し、変えるべきことと守るべきことに分けていきます。

守るべきこととは、事業の本質的な価値になっている部分です。
ここを変えてしまうと、その事業らしさを失ってしまうポイントと言えます。

それは、事業の機能的な側面の場合もあれば、情緒的な側面の場合もあります。
また、機能的な側面のある一部が守るべきことで、ある一部が変えるべきことになる場合もあります。

市場や顧客の価値観の変化をよみながら、「変えるべきこと」「守るべきこと」を決めていきましょう。

事業価値の再構築を失敗するポイント

1.「守るべきこと」を見誤ることによる失敗

前述のとおり、「守るべきこと」はその事業の本質的な価値であり、ここを変えてしまうとその事業らしさや独自性を失ってしまう部分になります。
ここを見誤らないことは重要です。
事業価値の再構築の失敗の多くは、「守るべきこと」を見誤り、事業の本質的な価値になっている部分まで変えてしまっている場合です。
環境の変化が著しい市場で戦っている企業などで起きがちです。
つまり、市場の変化、競合他社との競争の中で、「守るべきこと」を見失ってしまうのです。
その結果、既存の顧客を遠ざけてしまうという失敗を招いてしまいます。
市場の変化に寄り添いながらも、本質的な価値を守るといったバランス感覚が必要です。

2.イメージ変更に留まる失敗

事業価値の再構築をイメージの変更と捉えないことが大事です。
企業によっては、事業強化と称してロゴの変更やパッケージ変更、広告タレントの変更などでイメージアップを図ろうとする場合があります。
これは、単なるイメージ変更であって、価値の再構築とは言えません。
顧客側が事業価値の再構築によって期待しているのは、商品価値の向上です。
そのため、商品自体を向上させることなく、イメージだけを変えた場合には、その効果は短期的なものに帰してしまうケースが多くなります。
上辺のイメージだけではその効果は極めて限定的となります。
中身の向上を伴った事業価値の再構築を目指しましょう。

成功事例

●セブンプレミアムの事業強化

セブン-イレブン・ジャパンがプライベートブランドして展開する「セブンプレミアム」が2011年にリニューアルを実施しました。
佐藤可士和氏によるロゴやパッケージのデザインが話題になり、売上を大きく伸ばし事業価値の再構築に成功しました。
実はこの再構築は、イメージの変更に留まっていません。
当時2000を超えるアイテムの全てに渡って、商品自体の見直しを実施しています。
食品であれば従来よりも美味しいものへ、雑貨であれば従来よりも便利なものへと商品強化を行っています。
それは、この事業価値の再構築の目指すビジョンを「日常をより上質に」する事業ブランドになることを掲げているとおりです。
一見するとイメージ変更に見えるリニューアルですが、中身や商品自体の強化を伴った事業価値の再構築だった故に、生活者からの評価が高く長期的な売上の向上を可能にしたと考えられます。

事業力の強化へ

さて、ここまで事業価値の再構築について、進め方や成功するポイント、失敗するポイントについてお伝えしました。
事業価値の再構築においては「変えるべきこと」と「守るべきこと」を正しく見極め、商品の価値の向上を伴った取組みにすることの重要性をご理解いただけたと思います。

「変えるべきこと」と「守るべきこと」の見極めには、消費者視点、顧客視点といった第三者の視点を持つことが有効です。社内だけで事業価値の再構築を進める際に、最も大きな障壁になるのが、既成概念としがらみです。
社員として意識的にも無意識的にも、その会社のこれまでの概念や風土を理解しようとする姿勢が、事業強化を中途半端なものやイメージ領域のことで済ませてしまう結果を招きます。
事業価値の再構築をより効果的なものにするためには、第三者の視点を入れることが有効です。
当社では、事業強化を生活者の視点でサポートする体制を整えています。
一度お気軽にご相談ください。
事例の詳しい内容などご紹介させていただくとともに、企業の事情に即した効果的な取組みをご提案いたします。

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