企業ブランディングが失敗する原因とその対策。 みずほ銀システム障害にみるインナーブランディングの課題

みずほ銀行は、今年2021年2月以降、ATMで立て続けにシステム障害が発生しました。
みずほFG(フィナンシャルグループ)は、その外部の調査委員会の報告書を6月15日に発表しました。

みずほの企業ブランドを大きく失墜させる今回の不具合について様々な見方がありますが、ブランディングの視点から本事案の根本的な原因と対策について書かせていただきます。

背景

今年2021年2月末からシステム障害が相次いで発生しました。みずほ銀行では2018年以降、今回の事案とは別にATMに通帳やキャッシュカードが取り込まれる事案が1800件程発生していたことが、外部の調査委員会が発表した報告書で明らかになりました。
みずほ銀行は「公表基準に達していない」として、発表していなかったようです。

また、報告書では2月28日午前、業務委託先の管理センターからみずほ銀行の6つ以上の部署へ430件のエラーを検知したとの緊急メールが送られましたが、対応に動く担当者はいなかったと伝えています。通帳やキャッシュカードがATMに取り込まれるトラブルは最終的に5244件発生しましたが、それを想定できなかったと記されています。

ここまでが、みずほ銀行で発生したシステム障害の背景です。

みずほフィナンシャルグループ(FG)のブランドコンセプト

みずほフィナンシャルグループは自社のバリューを明らかにし、その上でビジョンを設定しています。

それは以下のような内容です。

ビジョン:<みずほ>のあるべき姿・将来像
  1. 信頼No.1の<みずほ>
  2. サービス提供力No.1の<みずほ>
  3. グループ力No.1の<みずほ>
みずほValue:役職員が「ビジョン」を追求していくうえで共有する価値観・行動軸
  1. 1. お客さま第一 ~未来に向けた中長期的なパートナー~
  2. 変革への挑戦 ~先進的な視点と柔軟な発想~
  3. チームワーク ~多様な個性とグループ総合力~
  4. スピード ~鋭敏な感性と迅速な対応~
  5. 情熱 ~コミュニケーションと未来を切り拓く力~

「みずほフィナンシャルグループ」ホームページより引用
https://www.mizuho-fg.co.jp/company/policy/ci/index.html

みずほ銀行のビジョン

みずほ銀行はグループのブランドビジョンとは別に、銀行としてのビジョンを設定しています。
それは経営からのメッセージとして記されています。

  • お客さまニーズの急速な変化に対応し最適なソリューションを提供
  • “お客さま起点”を徹底する

「みずほフィナンシャルグループ」ホームページより引用
https://www.mizuhobank.co.jp/company/info/management/index.html

インナーブランディングを失敗する原因

原因1:バリューとビジョンの乖離

みずほFGのビジョン、バリューはとても具体的で、ブランディングを推進する上ではとても分かりやすい内容になっています。
この内容から推測すると、みずほFGはビジョンを先に設定し、その実現に向けて役職員がどういう価値を提供するかをバリューとして設定したのではないかと思われます。

ひとつ残念なのは、本来バリューはその企業の独自価値やその企業ならでは強みを明らかにし、それを明文化したものになります。
ここで描かれているバリューの内容は、役職員がビジョンの実現に向けて取り組むことですので、むしろミッションに位置付けるべきものと考えられます。

前回のブログ「ビジョン・ミッション・バリューとは?その意味と設定プロセス。」で記したように、本来ビジョンは、自社のバリューをベースに描き、そのビジョンの実現のために取り組むことをミッションとして描くべきです。

みずほフィナンシャルグループのビジョンは、そのバリューの明確化という点が弱かったように思われます。
バリューをベースにしないビジョンは、絵に描いた餅になりがちです。
そうなると、ミッションとして設定したものも絵空事になりがちなので注意が必要です。

ビジョン・ミッション・バリューとは?その意味と設定プロセス。

原因2:ミッションの自分ゴト化

今回のみずほ銀行のシステム障害で最も残念なことは、銀行のビジョン(理念)として掲げている「“お客さま起点”を徹底する」が徹底されていなかった点です。
みずほ銀行のサイトでは、「みずほ銀行は、今後とも役職員一人ひとりが“お客さま起点”を徹底し、自ら考え・行動する」と記されています。

報告書の「エラー検知の緊急メールが送られたが、対応に動く担当者はいなかった」ことが事実だとすると、上記の理念が徹底されていなかったことが伺えます。

「“お客さま起点”を徹底する」
これは、企業ブランディング上、ミッションに位置付けられる内容になります。
このミッションを社内の各部門、全ての従業員で自分ゴト化できていれば、今回のシステム障害への対応はもう少し変わっていたように思われます。

企業ブランディングを失敗させない対策

みずほ銀行のシステム障害に関する対応で浮き彫りになった最も大きな課題は、企業ミッションを各部門、従業員が自分ゴト化できていなかった点が挙げられます。

バリュー・ビジョン・ミッションを各部門、従業員で自分ゴト化させていく取組みで、認識しておくべきことがあります。それは、以下の2つです。
・社内課題の明確化
・従業員インサイトの把握

社内課題の明確化は当たり前のことのように見えますが、この点が曖昧になっている事例をよく見かけます。
ビジョンの実現に向けて、その実現を阻害する要因は何か、今なぜそれが実現できていないのか、といった点を徹底的に明らかにすることが求められます。
それを曖昧にすると、なにも変わらない結果を招きます。

従業員インサイトの把握とは、従業員のモチベーションを上げるスイッチの発見とも言えます。
従業員のモチベーションは人それぞれで、それを発見しても意味がないと考える人もいます。
様々な企業と接する中で、実はその企業の従業員に共通するモチベーションスイッチがあることに気付かされます。
その企業の従業員ならではのインサイトを発見し、そのインサイトに基づく「自分ゴト化」への取組みを推進することが、インナーブランディングを失敗させないために必要不可欠です。

今回は、タイムリーな事案として、みずほ銀行を事例について、インナーブランディングの失敗とその対策について紹介しました。
今後のみずほ銀行の改善への取組みに、一顧客として期待したいと思います。
また、今回の事案はインナーブランディングを進める上で、示唆に富んだものですので、このブログが参考になれば幸いです。

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